遊泳禁止！

　市役所で働くK氏は休日の朝、川べりをのんびり散歩していた。
　すると、遠くからバシャバシャと水の音がした。
　音のするほうを見ると、ひとりの男が服を着たまま川を泳いでいた。
　その川は環境保護や事故を未然に防ぐため、泳ぐことは禁じられていた。
　規律に厳しいK氏は、そんなルールを破った男を見て、我慢できずに河原を駆け下りて言った。
「ちょっとあなた、そこは遊泳禁止ですよ。ほら、ここにも書いているでしょう」
　K氏はでかでかと「遊泳禁止」の文字が書かれた看板を指差した。
「泳いでるんじゃなくて溺れているんだ。はやく助けて！」
「ああ、溺れるのは禁止されていないので大丈夫です。失礼いたしました」
　K氏は深々と頭を下げたあと、颯爽と立ち去っていった。