ふるさと

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海を捨てた人魚が漁師の妻に打ち明けた。
「私は海を捨てたんじゃないんです。帰れなくなっただけ」
「私も街を捨てたんじゃない。帰れなくなっただけ」
「もしも帰れたら、みんなまた私たちと変わらず過ごしてくれるかしら」
「そんな人もいるし、変わってしまった人もいる。私もここの生活で知らないうちに変わったと思われた」
「じゃあ、あのふるさとはどこにあるの?」
「思い出の中にいつもある」
人魚は線香花火の明かりのなかに故郷が見えたことを思い出した。
「帰れないなら、忘れることはできる…?」
公開:23/04/29 09:52
更新:23/04/29 15:50

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