義憤による殺人

雪中に閉ざされた電車の中で、一人の男の刺殺体が発見された。この被害者は評判のよくない田山という男で、阿漕な商売でのし上がり未成年者ともよからぬ関係にあったらしい。
名探偵として名高い尾上も同じ電車に居合わせたが、三人の男女が協力して田山を殺したと白状した。義憤にかられてやった、どうか黙っていてほしいと尾上に懇願した。尾上も田山のことは好きではなかったので、犯人は逃げたと警察に知らせておいた。
ところがその後、無実の男が警察に捕まった。気の弱そうな男で自白に追い込まれたらしい。良心の呵責に耐えかねた女が出頭しようとしたが男二人に殺されたた。
調べが進むにつれて分かってきたのだが、田山に関する噂は根も葉もないもので彼は人格者で慈善活動にも力を入れていた。ライバル社からの誹謗中傷だったらしい。
しかし尾上も二人の男も、それぞれ家庭もあるし社会的地位もある。一生したことは黙っていようとなった。