味彩(あじさい)の花 ※リライト版

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「おひとついかがですか?」
商店街の花屋の店先。店員さんが差し出す爪楊枝には、紫陽花の花が刺してあった
「飴細工ですか」
「味に彩ると書いて味彩(あじさい)。新商品のエディブルフラワーです」
人の良さそうな笑顔と手元の花を見比べ、受け取ったものか迷う。エディブルフラワー、つまり食べられる花だ。今流行りの『映え』というやつだろうか。
「甘くて美味しいですよ。おひとつどうぞ」
「……いただきます」
星の形をしたピンクの花が金平糖の様にサクッと砕け、ほのかな甘みとほろ苦さが舌に広がった。子供の頃に空へ向かって口を開けた、雨の日の味だと思った。
「何だか懐かしい味ですね。こっちの花はどうだろう?」
夏空の様な青い花を噛んだ瞬間、しびれるほどの酸っぱさに顔をしかめた。
「紫陽花の花言葉は『移り気』。色も味もよく変わるんです」
人の悪い笑顔で店員さんが舌を出す。
「それに、青い紫陽花は酸性ですから」
ファンタジー
公開:23/05/01 18:10
更新:23/05/01 18:14
月の音色 月の文学館 テーマ:おひとついかがですか? 過去作リライト版 朗読採用いただきました♪

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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