忘れ物

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「どこから来たの!?」

ベランダに出た母が金切り声にも似た大きな声を出して驚いていた。
どうしたの?尋ねると母はただ無言で上を指差した。

母の指さす先、ベランダのサンルーフには、どうやってそこまでやってきたのか、箒が1つ乗っかっていた。

あまりに意表をつかれたので私は笑い声が漏れてしまった。それに釣られて母も笑い出した。

マンションの屋上階のサンルーフの上の箒。あまりにも素っ頓狂な光景だった。大方強風で吹き飛ばされてきたのだろうけど、前日にお転婆な魔女が出てくる映画を見ていた私と母は、これはきっと魔女がここで乗り捨てていったのだろうと結論付けた。

いつか魔女が忘れ物を取りに来るのではないかと期待して箒はベランダの端に今も掛けてある。
公開:23/05/01 01:02

ひばり

はじめまして。

自分がしたためていた文章がショートショートというジャンルにあたることをつい最近知りました。

いろんな人格が持ち寄った怖くない百物語のイメージで投稿できたらいいな。

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