走馬灯
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ぼんやりと明るい不思議な場所。目覚めた時持ったのはそんな感想だった。光は僕が見ている先の先まで続いているようだった。そんな見覚えのない場所に立っていると空から優しい声が聞こえた。「やあ、起きたのかい」その声は父でもあり母でもあるような変な声だった。空を見上げる。でもそこには何もいなかった。「誰ですか」僕は尋ねる。「誰でもない者。でも人にはよく走馬灯と呼ばれているよ」走馬灯。僕が知っているのは死ぬ直前に今までの記憶がフラッシュバックするものだけど。「違うよ。生か死を選んでもらうの」僕の心を見透かすように空は答える。そして続けた。「記憶を見せて選んでもらう。普通はね。ただ君にはそれが少なすぎる。だからここに呼んだ」ここは死の淵なんだろうか。僕はなぜかこの状況を受け入れていた。いや、知っていたんだろう。「もういいかな」次第に辺りは暗くなっていく。僕は眠るように目を閉じた。そして響く音。ゴンッ。
その他
公開:23/04/30 05:01
超ショートショート書いていきます
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