映画館でのとある出来事

映画上映中、ふと天井を見上げると忍者がいた。
真っ黒い装束を身にまとい、眼下の私達をじ～っと見ている。
何あれ？不審者？それとも変質者？
私は席を立つと外にいたスタッフに「天井に忍者がいます」と声をかけた。
声をかけてから『しまった…』と内心焦る。こんな突拍子もない事、絶対に信じてもらえない…
私の言葉にスタッフは怪訝な表情を浮かべる事なく、にっこり微笑んだ。
「天井の忍者ならご安心下さい。当映画館のスタッフです」
…えっ？
「あの忍者は、スマホ等で映画を撮影している人がいないか監視しているんですよ。映画泥棒対策です」
忍者が？
「はい。忍びは気配を消す達人ですのでこの仕事にうってつけなんです。忍者に気付かれたのはお客様が初めてですよ。よく分かりましたね」
「夜目が効くんです」と笑ってごまかす私。そそくさと中へと戻った。
『私も忍者ですから』なんて、絶対に言えない…言えるわけがない…