家宝のカギ

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そろそろ、このカギをお前に手渡してもいい年頃じゃろう。
「鍵を握る」という言葉があるが、あの鍵がこのカギのことじゃ。
このカギは、先祖代々継承してきた大事な家宝じゃ。どんな時代もこのカギを握ってさえおれば、歴史の裏側で重要人物となれた。そう、今風にいえば「フィクサー」のことじゃ。
この家宝のカギは、大阪にある日本最大の前方後円墳である仁徳天皇陵を上から見下ろしたときの鍵穴とピッタリ合う形状になっておる。
当時、古墳の番人をしていたご先祖が、副葬品であったこのカギで古墳に向かって鍵を開ける動作をしたところ「カチッ」と音がした。それ以降、我が家系は不思議な力を持つようになったと言い伝えられておる。
まさに鍵となる人物「キーパーソン」が、我が一族のことなんじゃ。
だから、これからも子々孫々に至るまで、未来永劫このカギを受け継いでいくことが、このカギを持つ者の責務となる。
あとはよろしく頼んだぞ!
その他
公開:23/04/15 07:01
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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