よくあること。Ⅱ　検察官は思った。

　河川敷で発見された遺体を検視した際、検察官は遺体の胃の中にケースに納められたSDカードを見つけた。遺体は52歳の男性、役場勤めの地方公務員、不審な点は皆無であった。検察官はデータを開いた。どうやら中身は…本人が撮影した動画らしい。

"中年男がアジア系と思われる女の髪の毛を掴み、奇声を発しながら顔面を殴り続けている動画…獣じみた唸り声をあげ、少女、あるいは少年たちと性行為に耽る動画…麻薬と思われる粉末を吸引し、下卑た笑い声を轟かせる動画…"

　…どれもこれも口にするのもおぞましく、汚らわしく、異常で異質で理解不能な動画が何本も続いた。

「チッ…めンどくせえなぁ…」
　こんなものを遺族や上司に渡しても仕事が増えるだけ――所詮、善人ヅラしたジジイが裏の顔を隠そうとしただけ――よくあることだ…よくあることなんだ。検察官はそう思い、SDカードを電子レンジで温めて、足元のゴミ箱に放り捨てた…。