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同窓会に行った。激務の毎日のほんの気晴らし。何十年ぶり。会場は武蔵野の面影のある鄙びた料理店。座敷に入ると、二十人ほどが飲み食い、喋って、もうみんな盛り上がっている。会費を払って席に着くと「おう、森本じゃないか」「久しぶり、えっと」名前が出てこない。「まあまあ駆けつけ一杯」たちまち宴会の勢いにまぎれる。男女半分ずつくらい。「森本クン」声をかけてきたのはかつて憧れた女子。「ノリコだっけ、綺麗だね」「今ならキスしてあげてもいいわよ」騒いで気づくとみんなとても若い。俺だけが老けたのか。「お前、重役だってな。出世頭だよな!」酒を飲むうちに、はっと気がついた。前の同窓会は二十年前。幹事の趣向で小さな屋台船。宴たけなわに天候が悪化。舟は揺れに揺れてついに転覆。俺だけが辛うじて岸に泳ぎ着き、みんなは川に流されていった・・。
俺は座敷の障子を開けた。外は激しい雨、ごうごうと渦巻く川が波しぶきを上げている。
俺は座敷の障子を開けた。外は激しい雨、ごうごうと渦巻く川が波しぶきを上げている。
ホラー
公開:23/04/18 14:34
2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。
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