縁を切る男

おれはいろいろな人との縁を切ってきた。好き嫌いが激しいのである。昔仲良くしていた人でも同様である。気持ちが冷めるとどうしても付き合いたくなくなってしまうのだ。
妻からも呆れられた。あなたの手の平返しが怖いわと言われた。だがおれはマイナスの影響をおれに及ぼす人と、付き合いを続けられるほど度量が広くはなかった。おれのことを嫌いだと思う人はおれと縁を切るなり距離を置くなりするから、お互い様だという気持ちもあった。
妻への愛も冷めた。おれは妻に離婚を持ち掛けた。妻もこんな日がくることを予見していたようだ。すんなり受け入れてくれた。
おれは友人知人がほとんどいない境遇となった。おれ自身がそうさせたのだ。
若い時は気を紛らわせる娯楽があったからまだよかった。しかし歳を取って身体も不自由になってくると、心配してくれる家族も友人もいないというのは寂しくもあった。
理解や忍耐というのも大切だなと痛感した。