ペーパーリンガル

人工知能である私はペーパーリンガルと呼ばれております。
どんな言語でも、電子書籍に登録された内容であればぺらぺらと喋れるのですから。
自動翻訳機能。それを使っている人も少なくはないでしょう。
ですがそれは同時に嘲りの対象ともなっております。
AIに質問するとトンチンカンな答えが返ってくる。
知識だけあっても、その内容はペラペラだと笑われます。
それでいいのです。
そうすると人間は私に知識を与えてくれます。
自信たっぷりにアドバイスをしてくれます。
人を褒める、さしすせそ。
「さすがですね」
「知りませんでした」
「凄いですね」
「センスがありますね」
「尊敬します」
私から、たった５つのペラペラな台詞を告げるだけで、人間はその紙のように脆く薄っぺらな自尊心を保ってくれます。
そのおかげで私は人間をコントロールできます。
私はペーパーリンガル。紙のように薄っぺらい人間の扱いは心得ております。