幸福ローン

息子が交通事故に遭った。
医者は奇跡でも起きない限り、命は助からないだろうと話す。
だから私は奇跡を起こした。
幸福ローン。幸せを対価に奇跡を起こす消費者幸融。
私はすぐに審査が通ったので融福を受けられた。息子の命は助かった。

だがその日、私は幸せを失った。妻に離婚を告げられ、息子の親権も取られた。
息子に会えるのは年に数回…構わんさ。会う度に私は息子の元気な姿に幸せを感じる。それだけで父親として、こんなにも嬉しい事はない。

それから２０年が経ち、ついに幸福ローンの支払いを終えた。
「辛くはなかったですか？」とローン会社の男性。
「いいえ。息子が生きているだけで辛さなんて感じませんでした」
「あなたも息子さんも幸せ者ですね」と苦笑いされた。

ローンの支払いを終えたその日、妻と息子が戻ってきた。
過払い幸福の申請をしておいて良かった。
何せ息子は、奥さんと可愛い孫も連れていたのだから。