映画館でのとある出来事

私はミニシアターを営んでおります。
ここで働く者は私と１体の古いロボット。今や多くの映画館が人間そっくりのアンドロイドを採用する中、ウチはまさに時代に取り残された映画館と言えるでしょう。
ウチで働くロボットは無口です。何せ発声機能がついてないのですから。
難しい命令も聞けず、出来る事と言えば時間通りにフィルムを取り替えるといった単純作業。機械ゆえの真面目さで、これだけは間違えずにやってくれます。
そんなロボットにある日、小さな子どもが尋ねました。
「ねえ、僕が好きそうな映画を教えて」
アンドロイドであれば、にっこりと微笑み教えた事でしょう。
しかしロボットには口がない。代わりに私が答えようとするとロボットは目から光を放ち、壁にモノクロの無声アニメ映画を映し出しました。
ロボットの見せる映画に子どもは釘付けで大はしゃぎ。
どうやらロボットは無口なだけで、本当は映画案内もしたかったようです。