映画館でのとある出来事

さっき見た映画のパンフレットを購入する僕の横で、彼女は映画に出てきた指輪に釘付けだ。
指輪は主人公がヒロインに永遠の愛を誓う重要なアイテム。グッズ商品とはいえ、気になって仕方がないのだろう。
僕は指輪も購入する。それを彼女の左手薬指に嵌め、プロポーズした。
口元を抑える彼女は小刻みに震えながらも頷いてくれた。

僕は彼女の事なら何だって分かっているつもりだ。
きっと彼女なら今日見た映画の指輪があれば欲しがるはず…僕はその指輪を前もってオーダーメイドで作ってもらっていた。それを映画館のグッズ売り場に置いてもらった。
いわばこれはフラッシュモブの一種。
プロポーズが成功して、ホッとした。

私は彼の事なら何だって分かる。
今日のデートで彼が私にプロポーズしようとしている事も、オーダーメイドの指輪を作ってくれた事もお見通し。
でもそれに気付いていない彼が可愛くて、笑いをこらえるのに必死だった。