ゆるし屋

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男は焼鳥屋の脇で、立ち続けていた。足元には小さな看板が置かれ、“あなたの代わりにゆるします”と、珍妙な言葉が書かれていた。

暇つぶしにやって来た、50がらみの女が聞いた。「人を簡単にゆるしちゃダメじゃないの?悪いことをしたら罰を与えて、徹底的に苦しめてやらなきゃ。だいたい代わりにゆるすって何よ。」男は、反論というふうでもないけれど、でも芯のある小さな声で言った。「あなたがゆるせない人っていませんか。」

女の目が一瞬輝いた。ゆるせない者の筆頭は姑であり、夫であり、隣家の住人だった。女は彼らに傷つけられ、彼らとの摩擦が人生をつらくさせていた。男は言った。「家に帰って私の名によってゆるす、と言ってみてください。あなたが許せなくても、あなたがまず、私の名前でゆるすと言えば彼らは恥じ入るでしょう。」

女は涙を浮かべた。疲れ果て、胸がいっぱいだったのだ。
男は名を告げ、女の前から消えた。
ファンタジー
公開:23/04/10 17:07

kidohe

「蝋燭」が人生初作品、初投稿です。
よろしくお願いします。

普段は、韓国(アジア)ドラマ・映画の字幕監修者として働いています。

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