異国の専業主夫
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マンハッタンの築40年超のアパートに住む専業主夫の大輔は窓辺で雨音を聞きながら、妻の帰りを待っていた。日本企業の駐在員として働く妻は朝、「今日は遅くなるけど、私の分も何か作っておいて」と言い残して出かけていった。この日は金曜日。アパートの廊下や階上では住人同士が友達らを招き、何やら英語で陽気に騒ぎ始めていた。大輔は二人分の白米を炊き、豚キムチを炒め、味噌汁を用意した。そして一人で先に食べながら缶ビールを一本開けた。専業主夫を始めて半年だが、大輔は自分が家事が得意であることに気づき始めていた。少なくとも料理や洗濯は妻よりも向いている。一方、迷いも大きくなっていた。自分が本当にやりたいことはこれなのかと。やがて妻が疲れた様子で帰宅した。彼女は食事には手を付けず、ソファに倒れ込むと静かに寝息を立て始めた。彼は、我が家の中はいつも静かだと思った。もっと音のある暮らし、会話のある毎日が恋しかった。
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公開:23/04/14 16:11
更新:23/04/14 16:12
更新:23/04/14 16:12
夫婦
海外
主夫
2022年から米国在住。
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