瞬間移動装置

瞬間移動装置ができた。といって移動できる範囲は限られていた。それでも乗り物や自分の足で移動するしかないことを思えば、かなり革新的な装置だった。
移動方法は少しユニークで指紋登録だった。例えば親指の指紋を会社に登録しておいて、家で親指でスイッチを押すと会社に瞬間移動できるのである。
会社から帰る時は家に人差し指の登録をしておいて、人差し指でスイッチを押せば家に瞬間移動できた。
中指なら友人の家、薬指なら飲食店、小指なら遊び場という風にアレンジできた。指や手に障害がありスイッチを上手く押せない人は代用のスイッチもあった。
みんな瞬間移動を満喫していたが、ある男は不倫相手の家を瞬間移動の行き先に登録しておいた。
うっかり亭主がいる時に瞬間移動してしまって、事情を察した亭主に捕まってしまった。そして指を切り落とされてしまった。
この事件があって以来人の家を行き先に指定することは止めようとなった。