オノマトペの結晶

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小さな店だった。
雑貨店のような雰囲気で、棚には天然石のような、けれど、どこか不思議な風情のものが並んでいる。
「それは『ぴかぴか』です」
振り返ると、店主が立っていた。
「これは全部、オノマトペの結晶でしてね」
「オノマトペ?」
「擬音語とか、擬態語とも言いますね。密度の高いものは結晶化するんです」
そう微笑んだ店主は、あなたからも取り出せそうだ、と私の手にお椀のように手を重ねた。
ややして開かれた手の上には、暗い石のようなものがあった。
「はらはら、ですね」
私は苦笑した。不安を抱え、いつも泣いてばかりいる私、そのものだったから。
思わず俯く私の手に、店主が別の結晶をのせる。
「うらうらです」
影のようなはらはらに、うらうらはそっと寄り添う。キラキラほど明るくはないけれど、温かな光が跳ねている。
「きれい…」
唇から零れた声と一緒に、桜の花びらが舞い落ちるようにはらはらと、涙が零れた。
ファンタジー
公開:23/04/06 21:21
更新:23/04/06 21:45

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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