平凡な公園

東京のある場所にある小さな公園。古い野球場の施設のある、平凡な公園だ。

でも、平坂さんは知っている。そこは、心が体から解き放たれて、自由にいろんな場所に行ける「異界への入り口」なのだ。

そしてそのためには方法がある。着ている洋服や持っているカバンに、ある「街の名前」が書いてある事。
たとえば「ニューヨーク・ヤンキース」のシャツを着ると、心はニューヨークに。目の前にセントラルパークの風景が広がる。しばらくすると現実に戻って来れる。
「ミシガン」なら、ミシガン大学のキャンパスに行ける。

ところがある日、彼は「東京ヤクルト・スワローズ」のシャツを着て公園のベンチに座った。すると、ふっと姿ごと、消えてしまった！

彼の服の胸には「TOKYO」と書かれていた。そして彼は、もうひとつの“別の東京”。地面の中か、空中か、虚構の東京に入ってしまったのだ。

平坂さんは、現世に戻って来れるのだろうか。