映画館でのとある出来事

今日、僕が誘った映画に彼女はとても不服そうだ。
「特別な映画って言っていたから楽しみにしていたのに…ただのプラネタリウムじゃん！」
そう、僕が彼女を連れて来たのは天井がスクリーンとなった劇場。
今日、ここで見られるのは星と神話の物語。配信も円盤化もされない、ここでしか見られないとっておきの映画だ。
でも映画好きの彼女からすると「こんなものは映画じゃない！」とご立腹。
ぶつぶつと文句を言いながら座席に寝ころび、上映を待つ。不満を言いながらも付き合ってくれ彼女が僕は好きだ。
ブザーと共に映画が始まる。
ゆっくりと天井が開き、今宵の満天の星空が僕らの目に飛び込んでくる。
ガラス張りの天井に映し出される星にまつわる物語。その背後には今日の夜空が広がっている。

「…面白かった」
ちょっと悔しそうに、すねた感じでそう話す彼女。
その胸にはパンフレット代わりなのか、星座早見盤が抱えられていた。