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胸に桜の花びらを携えて、体育館に入っていく。
大きな拍手で迎え入れられ入場していった。
奥にビデオカメラを構えた父の姿が見えた。
カメラで見えづらかったが、うっすら泣いているように見えた。
これから新しい生活が始まる。
僕を育ててくれた両親に感謝しながら、未来の生活を想像していた。

国歌斉唱の時、父は号泣だった。
泣くポイントがずれているのは、親譲りだ。

新入生代表の挨拶、苗字の順番から僕が当たってしまった。
後にも先にも唯一この名前に後悔した瞬間だ。
震えそう声を抑えながら読み上げた。

「親として立派に務め上げるよう、精進します」
妻との息もぴったり練習通りだ。

壇上から後ろを振り返る。
父に抱えられた僕たちの子供は、騒々しい会場でもぐっすりと寝ていた。
ファンタジー
公開:23/04/08 16:08

空飛びペンギン( 関東 )

ご覧いただきありがとうございます。

俳優業の傍ら、趣味でショートショートを製作しています。
田丸先生の書籍を読んでから、楽しく作っております。
ご意見、ご感想いただけると嬉しいです。


名作文学の朗読Youtubeを行っています。
http://www.youtube.com/@akky_roudoku

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