映画館でのとある出来事

我ながら酷い出来だ。酷評されて当然だ。
低予算少人数。撮影する期間も機材も少なかった。そんな中で撮った映画。素人目に見ても荒が目立つ。
主演は俳優ですらない。動きはぎこちない。馬鹿にされるのも頷ける。
金返せ！時間返せ！とブーイングの嵐。
こんなものを上映させてしまうなんて映画館にも申し訳ない…
今日も非難の嵐を一身に浴びる中、涙を流しながら最後まで見てくれている人がいた。
関係者だろうか？もしくは気分が悪いのだろうか？声をかけてみた。
「ああ…すみません。実は私、サイコメトリー能力を持っているんです。この映画、確かに出来は悪いです。でも映画に込められた思いが、皆さんの熱意が伝わって感動してしまいました。貴方は監督さんですよね。これからも映画を撮り続けて下さい」

『あの時、あの人と出会わなければ私は監督を辞めていたでしょう。私が今日、受賞できたのはあの方が私の琴線に触れてくれたからです』