秘書地

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都内からほどよい距離にある高原に、仕事に疲れた秘書たちが体と心を癒す「秘書地」があることは、意外と知られていない。
横柄な社長の相手をする秘書、人使いの荒い芸術家にこき使われている秘書、不機嫌になるとすぐに理不尽に怒鳴り散らしてくる政治家の秘書。
彼らと彼女たちが、一時の癒しを求めて「秘書地」に集まってくる。
いちばんのリクリエーションはおしゃべりだ。心身が衰弱した秘書たちが集まり、お互いの傷を舐めあうことで癒しを得る。
「自分の上司は……」
「うちのボスは……」
「ほう」とか「そうですか」という相槌がそこら中で聞こえる。
秘書たちは仕事柄、機密情報を扱うことが多い。ここでの話は、外部には漏らせない。だからどうしても小声になる。
もちろんそれらは、ヒショヒショ話だ。
その他
公開:23/04/05 08:17

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