折りたたみ植物園

「今ごろ、花が咲いているだろうね」
窓の外を見て、淋しそうにおばが言う。

おばは2月から入院している。今は3月下旬、外の桜は満開だ。

花が好きで、よく植物園に連れて行ってくれた。部屋のベランダでも花を育てていたっけ。
どうすればいいんだろう。

病院を出て、近くに花屋さんがあった。生のお花は持ち込めない。

「お困りですか」
店員さんが話しかけてきた。

「実は、おばが入院していて」

「お見舞いに喜ばれるんですよ」
店員さんは折りたたみ傘を出してきた。ピンクの花柄だ。

病室に戻ると、説明通りに傘を開く。
部屋一面にパッと桜が広がる。一緒に行った植物園だ。

「この部屋にも春が来たね」
おばは、とても嬉しそう。

「桜のあとは、真っ赤なつつじが咲くよ」

でもね。

退院が決まると傘が枯れるんだって。実から種が取れる。

ベランダのプランター、淋しがってるよ。
一緒に傘の種をまこう。