ひとひらの旅

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枝を離れた私を受け止めたのは、掌だった。
丁寧にどこかに仕舞われる。薄闇に包まれて眠りについた。

つぎに目覚めたとき、女の子がこちらを見つめていた。
「押し花、綺麗にできたね」と褒める女性もいる。「これでずっといっしょ」と女の子が笑って、またどこかに優しく仕舞われた。
誇らしい気持ちで、私はふたたび眠りに落ちた。

おや、しおり。

久しぶりに聞こえた声は、あの子のものではなかった。
「また挟んでおくしかないね。持ち主のもとへ帰れますように」
どうやら私は仕舞われたまま、別のひとの元まで旅してしまったらしい。
長い指が、私を愛でるように撫でてゆく。
「春は外出できなかったから。お花見できて嬉しいよ」
あの子に負けないくらい愉しそうな笑みに見送られて、私はみたび眠った。

「ママ、お花あった!やっぱり、こないだ借りてた本に挟んじゃってた!」
遠くであの子の声が弾む。
ただいま、と私は囁く。
ファンタジー
公開:23/03/31 23:54
更新:23/03/31 23:59

rantan

読んでくださる方の心の隅に
すこしでも灯れたら幸せです。
よろしくお願いいたします(*´ー`*)

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