リコレクションボトル

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 父は旅行が好きで、家族を色々な所へ連れて行ってくれた。
 もちろんそれは母と結婚する前、もっと言えば、母と出会う前からそうだった。
 そんな旅の思い出を、父はいつもボトルに入れて保管していた。
 リコレクションボトル。これは、過去の記憶を保管しておけるボトルだ。
 蓋を開ければいつでもその記憶を追体験できる。ただし、何度も蓋を開けると、そのぶん記憶は薄れていってしまう。ボトルに入れた記憶は揮発性が高くなってしまうから、らしい。

 父はいつも、そのボトルを愛おしそうに眺めているだけだった。
 開けてみれば? と訊いても、いや、眺めるだけで充分だよ。と返ってくるばかり。当時はどうしてだろうと思っていた。

 先日、父の葬儀が行われた。一段落して残された父の書斎。棚に並ぶ瓶たち。その中で記憶の欠片がキラキラ輝いている。

 瓶の表面を撫でる。

 ──ふと、あの日の父の横顔が頭をよぎった。
ファンタジー
公開:23/03/31 23:25
思い出

たけなが


たくさん物語が作れるよう、精進します。
よろしくお願いします!

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