こどく

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 船が発見された時、残っていたのは瀕死の彼だけだった。
 
 私の船がこの国の港を出たのは三年前です。乗組員は百人。大きな船でした。
 でもみんな死んだ。
 仲間が消えるたび、その遺志が私の中に残されました。
 そもそも航海に必要な食料も水も最低限しかなかった事。国が救助に動かなかった事。最初から私達が使い捨てだった事を知りました。
 私の身の内には九十九人の恨みが凝縮しているのです。

 ところで疫病は船で運ばれるという話は知っていますか?
 私の船でも流行病が出て、感染者の半分が亡くなったことがあります。どこぞの風土病らしいですけど、治療法はありませんでした。
 ほら。私の手。
 最初はこんな風に発疹が出て、やがて体中に拡がります。
 どこで感染したのか、私の中で潜伏していたのか。

 この国に着いてから出始めたんですよ。

 そうそう、あなたの手にも同じものが出ていますね。
ホラー
公開:23/03/30 14:46
更新:23/04/21 18:19

堀真潮

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tamanegitarou1539@gmail.com

 

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