旅する電話ボックス

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俺は帰宅途中の公園で缶ビールを飲み、月を眺めていた。
「いつか月へ旅行に行ってみたいな…あっ! 流れ星」その時、娘からケータイに電話がかかってきた。
『パパ、タマにごはんあげてね』
「そうだったな、ママと爺ちゃん家に行ってたんだよな」
充電がゼロになった。仕方なく、傍の電話ボックスに駆け込んだ。刹那、頭上からカウントダウンが聞こえてきた。
5、4、3、2、1…ゼロ!
「はっ? なんの冗談だよ」冗談ではなかった。轟音とともに、電話ボックスは上昇し、夜空へ打ち上げられた。
『只今より大気圏に突入します』
「……うそだろ」
電話ボックスは地球を離れ、月面に着陸した。俺はとにかく娘のケータイに電話をかけた。
『パパ、家にいるの? タマ元気にしてる』
「ああ、今、お餅つきしてるよ。ウサギだからな」
俺は地球を眺めながらビールを飲み干した。電話ボックスは離陸し地球へ向かった。
SF
公開:23/03/30 02:19
更新:23/03/31 19:35
プチコン

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞作品】
「渋谷シティ」
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。
「我が家の食卓」
ベルモニーショートショートコンテスト入賞。
「電車家族」
隕石家族ショートショートコンテスト入賞。
「大男の力自慢大会」
「スカイフィッシング」
空想競技2020ショートショートコンテストW入賞。

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