旅路
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「急がなきゃ!」
妻が和室であたふたしている。
「おい、何もそんなに慌てんでも」
妻がこの旅路について来るとは、夢にも思ってなかった。正に旅は道連れとはこの事である。
「あなた、お待たせしました」
「よし、では行こう」
「あ!」
「どうした?」
妻は再び部屋に引っ込むと、今度はスカーフを手に戻って来る。
「あなたが誕生日にくれたものです。これをね、取りに戻ってたんです」
「全く、お前ってやつは」
二人は寄り添いながら自宅を後にした。
☆
とある病院の一室で一人の老女が臨終を迎えた。
「お母さん、どうして!」
泣き叫ぶ娘。
不慮の事故だった。
父が危篤だと連絡があり、慌てて自宅を飛び出した母は、何故か引き返そうとして車に撥ねられた。
そして奇しくもその日、危篤だった父も一緒に天国へと旅立った。
「本当にそそっかしいんだから」
母があの日、なぜ引き返したのか、残された家族にそれを知る術はない。
妻が和室であたふたしている。
「おい、何もそんなに慌てんでも」
妻がこの旅路について来るとは、夢にも思ってなかった。正に旅は道連れとはこの事である。
「あなた、お待たせしました」
「よし、では行こう」
「あ!」
「どうした?」
妻は再び部屋に引っ込むと、今度はスカーフを手に戻って来る。
「あなたが誕生日にくれたものです。これをね、取りに戻ってたんです」
「全く、お前ってやつは」
二人は寄り添いながら自宅を後にした。
☆
とある病院の一室で一人の老女が臨終を迎えた。
「お母さん、どうして!」
泣き叫ぶ娘。
不慮の事故だった。
父が危篤だと連絡があり、慌てて自宅を飛び出した母は、何故か引き返そうとして車に撥ねられた。
そして奇しくもその日、危篤だった父も一緒に天国へと旅立った。
「本当にそそっかしいんだから」
母があの日、なぜ引き返したのか、残された家族にそれを知る術はない。
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公開:23/03/29 10:07
文字の海を彷徨う、孤独な鯨。
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