レトロに乗って
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地下鉄のホームで『通りゃんせ』を聞いた気がした。
あかがね色の前照灯を光らせ、霧の向こうからセピアの車体が滑り込む。レールの軋みとブレーキの鳴く音に続けて型板硝子のドアがカラカラ開いた。
「望郷レトロ、追憶行きです」
ヴィンテージレザーの座席と飴色のつり革。リトグラフの車窓にモノクロの街並みが流れては消える。
潰れてしまった角のタバコ屋。使いそびれた百円札。渡せなかったボタンに憧れだった特撮ヒーロー。不思議な乗客達と思い出を巡り、幾つかの節目駅を通過した。
果たせなかった約束、叶えたかった夢がたくさんあった。もしもう一度戻れるなら。隣に座ったブラウン管テレビのダイヤルを回す。
飛び出したきりになった家で若い両親が微笑んでいる。肩車をねだろうと座席によじ登る。
ザッと砂嵐が過ぎ、画面の奥に見慣れたワンルームが映った。
そうか、戻れないからこそ追憶なのだ。薄苦さを噛み締めて画面をくぐった。
あかがね色の前照灯を光らせ、霧の向こうからセピアの車体が滑り込む。レールの軋みとブレーキの鳴く音に続けて型板硝子のドアがカラカラ開いた。
「望郷レトロ、追憶行きです」
ヴィンテージレザーの座席と飴色のつり革。リトグラフの車窓にモノクロの街並みが流れては消える。
潰れてしまった角のタバコ屋。使いそびれた百円札。渡せなかったボタンに憧れだった特撮ヒーロー。不思議な乗客達と思い出を巡り、幾つかの節目駅を通過した。
果たせなかった約束、叶えたかった夢がたくさんあった。もしもう一度戻れるなら。隣に座ったブラウン管テレビのダイヤルを回す。
飛び出したきりになった家で若い両親が微笑んでいる。肩車をねだろうと座席によじ登る。
ザッと砂嵐が過ぎ、画面の奥に見慣れたワンルームが映った。
そうか、戻れないからこそ追憶なのだ。薄苦さを噛み締めて画面をくぐった。
ファンタジー
公開:23/03/31 13:27
プチコン
旅
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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