ヒッチハイク

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「旅は道連れというでしょう? 一人は寂しいでしょうから付き合いますよ」
そう言って半ば強引に乗り込んだ車で夜の山を登っていた。ヒッチハイクで乗れず、ここを歩いていたと考えると辟易する。
チラリと運転している横のオッサンを見る。
山頂でどうとかボソボソと言ったが実際は聞いてなかった。一緒に行くと言うと驚いた顔をしていたがまあいいだろ、どうせ聞く価値はない。
男は結局俺を乗せた。嫌と言えない、自分というものがない典型的な馬鹿だ。自信なさげに肩を寄せてハンドルを握っている。ヨレたスーツと落ち窪んだ目、うだつがあがらず、世の中が生き辛そうだと一目でわかる。こんなクズみたいにはならない。
俺は自由に生きてやるんだ。
すると山の頂上付近で車の速度が突然上がった。崖に向かい猛スピードで突っ込んでいく。
男はどこにいく旅だったのか。
よく聞けばよかった。
どうして道連れなどと言ってしまったのか。
ホラー
公開:23/03/31 09:59
更新:24/03/15 11:13

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