旅の扉

神様から、もう一度人生をやり直してこいと言われた。
目の前に二つの扉がある。
「次の人生は、選んだ扉で決まるんだ」
顔に靄がかかった男が話しかけてきた。
男は光った扉に指を指す。
「光の扉は、前の人生で上手くいかなかったことが全て上手くいく」
男は次に普通の扉に指を指す。
「普通の扉は、前と同じで上手くいかないことが多い平凡な人生。ま、努力次第で変えることは出来る」
扉の説明が終わると、男は光の扉と普通の扉の間に立った。
「さぁ、どっちの扉を選ぶ？」
男の問いに、俺は迷うことなく普通の扉に指を指した。
「やっぱりそっちか……。上手くいきすぎる人生はつまらないからな」
もうそろそろ行くと言うと、男は笑顔で手を振る。
「人生は旅だ。たっぷり冒険してこい」
男の顔の靄が晴れていき、よく知っている顔が現れた。
「後悔のない人生を送ってこいよ」
前の人生の俺に見送られながら、俺は扉を開けた。