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ある地方都市に出張したときにぶらぶらと散歩して、大きな公園にはじめて入った。木々が整然と並び人々が散策している。そのうち行き交う人がなぜか私に注目する気がした。有名人ではないのに。立ち止まって聞いてみた。「私が何か変ですか?」「あっちにあなたの像が」と指差す方向には台座の上に彫像が立っている。近づいて驚いた。他人の空似ではなく確かに私の顔の像。ブロンズや大理石でなくセメントっぽい石の彫像は等身大の私の複製だ。人が変な顔で見るはずだ。離れたところの像に行ってみるとまた私の彫像だ。その向こうにもまた一つ。よく見ると道の両側の台座に彫像が並んでいる。すべて私の像らしい。順々に見ていくと作業着の男たちが数人で台座を囲んでいる。ブルーシートにはセメントを水て溶いた平たいバットがおいてある。台座の上には何もない。不審な顔の私に作業員が「ようこそ。準備はできています」。逃げたくなったが足が動かない。
その他
公開:23/03/30 17:09
2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。
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