運命の出会いは旅先で

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私はある高原へと一人旅に出た。そこは両親の思い出の場所。

私の父は、私が幼い頃に病死した。母は父との馴れ初めを時々語ってくれた。大学生の頃、旅先のこの高原で出会ったのが始まりだったと。

私も大学生になり、なんとなく辿りたくなったのだ、両親の足跡を。

だが、駅からホテルへ向かう途中で私は道に迷ってしまった。

「どうしたの?」

一人の優しそうな男性が私に声をかける。

「ホテル山岸?連れて行ってあげ……」

「看板ありますよ!」

会話を遮るように別の男性が大声で叫ぶ。周囲の視線が注がれ、私は恥ずかしくなり慌ててその場を去った。

羽を伸ばした後の帰りの電車。スマホを見て驚いた。

詐欺で逮捕された容疑者が、私に声をかけたあの男性だったのだ。

私は思い出していた。

大声で叫んだ男性、今思えば見覚えが……まさか。

家に着いたら、母に頼んで見せてもらおう。

あの頃の、父の写真を。
ファンタジー
公開:23/03/27 00:00
更新:23/03/27 00:08
プチコン

makihide00( 鳥取→東京→福岡 )

30代後半になりTwitterを開設し、ふとしたきっかけで54字の物語を書き始め、このたびこちらにもお邪魔させて頂きました。

長い話は不得手です。400字で他愛もない小噺を時々書いていければなぁと思っております。よろしくお願いします。

Twitterのほうでは54字の物語を毎日アップしております。もろもろのくだらない呟きとともに…。
https://twitter.com/makihide00

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