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仕事の合間の仮眠から目を覚ますと、
「旅ニ出マス、探サナイデ」
と置き手紙を残し、私のボディは居なくなっていた。
「嘘でしょ!? まだまだ仕事が山積みだってのに、頭だけじゃ手も足も出ないじゃないっ!」
私は自立歩行型の旅行鞄に飛び乗り、自分探しの旅に出た。
追跡は容易だった。
足元から僅かに漏れるオイルに気が付かなかったらしい。
所詮、能無しね。
点々と道に残る痕跡は、野を越え山を越え、海岸で途切れていた。
どうやら海を渡ったらしい。
私は船に乗り込み、後を追った。
波に揺られて数時間、船着場に私のボディが佇んでいた。
「ボディの分際でよくもっ!」
と癇癪を起こした私を、彼女は優しく持ち上げて自分の首に装着した。
そこには、青い空が何処までも続き、柔らかな波の打ち寄せる美しい島があった。
幼い頃、家族と一緒に訪れた思い出の場所だ。
私は感謝を込めて、自分の身体をぎゅっと抱きしめた──。
「旅ニ出マス、探サナイデ」
と置き手紙を残し、私のボディは居なくなっていた。
「嘘でしょ!? まだまだ仕事が山積みだってのに、頭だけじゃ手も足も出ないじゃないっ!」
私は自立歩行型の旅行鞄に飛び乗り、自分探しの旅に出た。
追跡は容易だった。
足元から僅かに漏れるオイルに気が付かなかったらしい。
所詮、能無しね。
点々と道に残る痕跡は、野を越え山を越え、海岸で途切れていた。
どうやら海を渡ったらしい。
私は船に乗り込み、後を追った。
波に揺られて数時間、船着場に私のボディが佇んでいた。
「ボディの分際でよくもっ!」
と癇癪を起こした私を、彼女は優しく持ち上げて自分の首に装着した。
そこには、青い空が何処までも続き、柔らかな波の打ち寄せる美しい島があった。
幼い頃、家族と一緒に訪れた思い出の場所だ。
私は感謝を込めて、自分の身体をぎゅっと抱きしめた──。
SF
公開:23/03/28 14:31
(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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