幽霊料理人

コンコンコンコン。
何かを叩く音が聞こえる。音は厨房の方から聞こえる。それは、まな板の上で包丁で何かを切っている音だ。この屋敷の中には、誰かがいる。僕しか住んでいないはずなのに。僕は厨房をそっと覗いてみる。すると包丁が空中に浮いていて、野菜を切っているのだ。
「おお、良い匂いだ。でも相変わらず不気味な光景だ」
僕は声を出した。しかし包丁の動きは止まることなく、黙々と料理を作り続けていた。そして鍋の中に先ほど切った野菜を入れて、今度は鍋の中で何かが煮込まれている。これはスープか。良い匂いが漂ってくる。僕は、そっと厨房を出て食卓テーブルに着く。しばらくすると料理が空中に浮いて運ばれてきた。
「いただきます」
そう言って食べる。
「今日もとても美味しいよ。ありがとう」
彼か彼女かは分からないけど、その人は幽霊料理人。屋敷に住まう幽霊だ。姿は見えないけど僕に美味しい料理を振舞ってくれる。