小さな鉢植え

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 小さな園芸店。棚に多肉植物の鉢が並んでいる。
「可愛いでしょう。話かけていると返事をしてくれるようになりますよ」
 初めての一人暮らしが寂しくてたまらなかった私は、小さなサボテンの鉢を一つ買った。
 考えてみればただの独り言なのだが、言葉を向ける対象があるというのはかなり違う。
 小さな鉢植えは私の寂しさを癒し心の拠り所となった。
 毎日話かけ、誰にも言えない心の内を鉢植えにだけは打ち明けた。
 ある日、ついに鉢植えが返事をしてくれた。やがて友達を会話するように鉢植えと話すようになった。

「新しい鉢をお求めですか?」
 私は頷き、葉がハート型のものを選んだ。
 これ「も」可愛いですよねと店主が笑顔を見せる。
 叩き割ったサボテンの代わりとは言えない。

 いいか悪いか関係ない。私はただ肯定されたいだけ。
「それでいいの?」
 最後に刺さったサボテンの棘がチクリと痛んだ。
 
 
ファンタジー
公開:23/03/27 12:27
更新:23/03/27 12:27

堀真潮

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