タンポポと蟻
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そのタンポポは公園の片隅にしとやかに咲いていた。
天気の良いある昼下がり、彼女は思い出した。
──君と一緒ならどこまでも。
そう言ってくれたのはどこの誰だったか……。
気がついたら、この地に根を張り、ただひたすら春を待ち、ようやく花を咲かせたばかりだ。この場所から動いた事などない。
通りすがりの蟻がいう。
「いよいよだな」
やがてタンポポは綿毛になる。
もう少し強い風が吹けば旅立ちの時だ。
強い風が吹いた。
そしてあの時の蟻が、当然のように一つの綿毛にしっかりと掴まる。
「君と一緒ならどこまでも」
ああ。そうだ。この人だ。
前の旅立ちの時も、そう言って励ましてくれたのだったわ……。
タンポポは記憶の底に沈んでいたセリフをもう一度思い出し、にっこりと微笑んで応えた。
──ええ。貴方と一緒にどこまでも。
蟻は照れるように触覚をクシクシと前脚で整えた。
天気の良いある昼下がり、彼女は思い出した。
──君と一緒ならどこまでも。
そう言ってくれたのはどこの誰だったか……。
気がついたら、この地に根を張り、ただひたすら春を待ち、ようやく花を咲かせたばかりだ。この場所から動いた事などない。
通りすがりの蟻がいう。
「いよいよだな」
やがてタンポポは綿毛になる。
もう少し強い風が吹けば旅立ちの時だ。
強い風が吹いた。
そしてあの時の蟻が、当然のように一つの綿毛にしっかりと掴まる。
「君と一緒ならどこまでも」
ああ。そうだ。この人だ。
前の旅立ちの時も、そう言って励ましてくれたのだったわ……。
タンポポは記憶の底に沈んでいたセリフをもう一度思い出し、にっこりと微笑んで応えた。
──ええ。貴方と一緒にどこまでも。
蟻は照れるように触覚をクシクシと前脚で整えた。
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公開:23/03/23 23:49
【椿あやか】(旧PN:AYAKA)
◆Twitter:@ayaka_nyaa5
◆第18回坊っちゃん文学賞大賞受賞
◆お問合せなど御座いましたらTwitterのDM、メールまでお願い申し上げます。
◆【他サイト】
【note】400字以上の作品や日常報告など
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