ハンモック紀行

旅枕ツーリストが新しいドリームツアーを始めるらしい。
シーツダイビングや布団飛行、マットレストレッキングにブランケットの密林探検。どれも夢一杯のスリープトリップだったけど、今度はハンモック船でゆうらん紀行だそうだ。

まぶた海峡でうつらうつら船を漕ぎながら、まつげ毛波を泳ぐヒツジウオの群れを数える。あくび砂丘のサンドマンと早いびき競争をし、ねむのき岬の灯台に子守り唄星が灯るのを見る。きっと極上のまどろみ体験が待っているだろう。
船長のバクは居眠り運転の名人で、毎晩とれたての夢料理をふるまってくれる。こっくりこっくり温めたホットミルクの霧の中、クッションヶ峰に寝そべって、世界に『おやすみなさい』のキスをする――

そんな夢が見られたらいいのに。
ネオンきらめく街で電脳ネットをサーフィンしながら、今日も夢想シミュレートにふける。
ナノ秒のうたたねも知らない不夜城のアンドロイドには、夢のまた夢。