旅する気体

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空気はいつも旅をしている。
コリオリの作用により東から西へと流れ、太陽エネルギーの作用により上昇と下降を繰り返している。
その幅はおおむね10㎞から20㎞程度。地球の半径から比べると薄皮一枚の隙間を、空気は永遠に旅を続けている。
ただわずかな例外がある。そのうちのひとつが水素だ。
岩石奥深くに閉じ込められていた水素は、天然ガスの掘削とともに大気に飛び出し、軽さを活かしてぐいぐい上昇していく。
空気たちが薄皮一枚の中を旅しているのを横目で見ながら、水素はさらに上昇し、地球の重力を振り切って、ついには宇宙へと飛び出していく。
水素の旅先はどこになるのか。惑星につかまって再び大気になるか、太陽に取り込まれて核融合エネルギーの材料になるか、それとも永遠に宇宙を旅するのか。
その行方は、だれも知らない。
SF
公開:23/03/25 11:37

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