赤い絶景

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そういえばいつだか満員電車の中で立っていたとき、フラッときて危なかった。
健康診断で貧血と言われた僕は、積極的にレバーや赤身の魚を食べることにした。

これからどこへ行こうか。
俺はワクワクしながらヘモグロビンにくっついた。
「最近、仲間が増えてきたんです」
ヘモグロビンは、俺を運びながら嬉しそうに言った。
「それは助かるよ」
おかげで俺たち酸素は、体の隅々まで旅することができる。
生きている人の体内は美しい。
病原菌を退治してたり、出血を止めていたり、それぞれが休むことなく活躍している。
なんて良いエネルギーに満ち溢れた世界なんだろう。
明日も明後日も生きようと、絶えることなく振動している。
「ありがとう、じゃあね」
ヘモグロビンと別れた俺は、まだ見ぬ細胞での観光を楽しむ。
ファンタジー
公開:23/03/20 23:05

リツ

せっかく娯楽として読んでいただけるなら良い気分になるものを、というポリシーで書いています。

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