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秋が来た。涼しい季節は、人間の活動を活発にする。

時代はテクノロジー化が進んでいた。最新のテクノロジーは、人々の秋をより良いものにした。

スポーツの秋。VRスポーツが空前のブームだった。年齢や生まれつきによる身体差も、VR空間なら関係なくプレーすることができた。

芸術の秋。過去作品のビッグデータが、人々の感覚や記憶とリンクし、表現したい作品を自由に創ることができた。

食欲の秋。ものを噛んだり飲んだりするのは、とうに昔の話になっていた。食糧難によって、実在のものを口にするのは、富裕層の趣味でしかなかった。

私はバッグから、モンブラン風味の注射器を取り出した。無痛針を腕にあて、注射器を押した。

秋の醍醐味が、脳神経をとおして、口いっぱいに広がった。
SF
公開:23/03/22 19:00

イヌ・ヘンドリクス

小説が好きな犬です。

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