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卒業証書の入った筒を大切そうに抱えた少女を見掛け、そういえばもうそんな時期なんだなと、まるで他人事のように思う。いや、他人事のようじゃなくて他人事そのものか。最終学歴である高校を卒業してから、かなりの時が経過しているから。

高校時代、遅刻ギリギリで自転車を走らせた通学路。徒歩通学らしい彼女は時折、何かを懐かしむかのように空を見上げている。三寒四温の寒い日に当たってしまった今日。おそらくは溜め息をついたのだろう。彼女の口から白い息が立ち昇った。
この時期に思い出すのは自分の卒業式じゃなく、大好きだった先輩の卒業式だ。自分の時より、先輩の時のほうが悲しかった。都会に行ってしまう先輩には、もう会えない。そんな気がして、でも必死で涙をこらえて笑ったっけ。

トボトボと歩いていた彼女は不意に、真上を見やった。きゅっと唇を噛み締めて。そんな彼女は、まるで「泣かないよ」とでも言っているかのようだった。
その他
公開:23/03/18 20:58
卒業 書く習慣 泣かないよ

ののの糸糸( Ito Nonono )

ツイッター(https://twitter.com/no3_ito)や創作系SNS、くるっぷ(https://crepu.net/user/no3_ito)に140字小説(ツイッターノベル)や54字の物語を投稿している他、上限2000字で掌編小説を書いている昭和女子。

野辺りな名義でユーザー登録していましたが、登録したツイッターアカウントで創作活動をしなくなったのと退会が出来なかったため、野辺りなは無期限活動停止とし、現在、創作活動中のツイッターアカウントで新規登録してこちらで引き継ぐことにしました。

『今日は何の日』や『書く習慣』というアプリのお題で書いた散文をまとめて400字にしています。

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