旅の出会い

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僕はパーソナルスペースが広いのか、知らない人が側に居るのが苦手でね。
列車に乗る時は、自分の隣の席も購入して、誰も寄せ付けずに一人旅を楽しんだものさ。

あの日も同じ様にふた席用意して、目的地まで、ゆっくり昼寝でもしようかと思ったその時だ。
「あの……ここ、私の席なんですけれども」
そう言って声をかけてきた女性がいた。
最初こそなんて図々しいと思ったさ。だけれど目をあけて驚いたね。
まさしく僕の理想を絵に描いたような女性だった。
スマホのチケット画面をみせて貰うと、どうらや次の列車と勘違いして乗ってきてしまったらしい。
気の毒になって僕は快く隣の席を譲った。
人見知りの僕にしては珍しく話も弾んだものさ。

「……それが妻とのなれそめなんだよ」

部長の自宅での食事会。
そうニコニコと惚気を聴かされるのは悪くない。
ただ、となりの空席をさして「妻」を紹介された部下たちは誰も何も言えなかった。
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公開:23/03/18 19:16

椿あやか( 猫町。 )

【椿あやか】(旧PN:AYAKA) 
◆Twitter:@ayaka_nyaa5

◆第18回坊っちゃん文学賞大賞受賞
◆お問合せなど御座いましたらTwitterのDM、メールまでお願い申し上げます。

◆【他サイト】
【note】400字以上の作品や日常報告など
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