字間旅行
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罫線に沿って街を書く。
街路樹を生やし、家々を並べ、人を歩かせて行散歩を楽しむ。時には2行跨いで線路にする。ページの端まで列車を走らせ、マスの車窓から過ぎゆく文を眺める。夕陽が落ちて月が上り、インクブルーの夜が降る。
罫線に沿って海を書く。
白々と広がる紙の陰影に、擦れたHBの波紋が揺れる。水平線に船が浮かび、鯨が2Hの潮を吹く。余白に泳ぐ句点は遠眼鏡越しの無人島になって、片割れの読点の漂着を待っている。午後の風が運んだ消しゴムが、砂浜の置き手紙をさらっていく。
罫線に沿って空を書く。
筆先から刷毛雲が湧き、淡墨ににじんで暈を差す。放物線の日照軌道を斜に構えた飛行機雲が横切り、通り雨が過ぎた後はクレヨンの虹が七行を染める。最後の1枚の裏側を、鏡文字の箒星が流れ落ちる。
罫線になった空に書く。
キャンパスを発った言羽の群れが蒼穹を舞う。
――絶景仮名。
物語の終着点は、誰も知らない。
街路樹を生やし、家々を並べ、人を歩かせて行散歩を楽しむ。時には2行跨いで線路にする。ページの端まで列車を走らせ、マスの車窓から過ぎゆく文を眺める。夕陽が落ちて月が上り、インクブルーの夜が降る。
罫線に沿って海を書く。
白々と広がる紙の陰影に、擦れたHBの波紋が揺れる。水平線に船が浮かび、鯨が2Hの潮を吹く。余白に泳ぐ句点は遠眼鏡越しの無人島になって、片割れの読点の漂着を待っている。午後の風が運んだ消しゴムが、砂浜の置き手紙をさらっていく。
罫線に沿って空を書く。
筆先から刷毛雲が湧き、淡墨ににじんで暈を差す。放物線の日照軌道を斜に構えた飛行機雲が横切り、通り雨が過ぎた後はクレヨンの虹が七行を染める。最後の1枚の裏側を、鏡文字の箒星が流れ落ちる。
罫線になった空に書く。
キャンパスを発った言羽の群れが蒼穹を舞う。
――絶景仮名。
物語の終着点は、誰も知らない。
ファンタジー
公開:23/03/19 19:31
プチコン
旅
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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