不死目を求めて

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「随分と長い旅だったな」
「いよいよですね隊長」
二人の男は赤と橙の縞模様のキノコを前にしている。
「さぁ、ついに不死を……」
隊長はキノコをもぎ取る。
「では戻りましょう」
部下が来た道を戻るが、隊長の足音が聞こえない。
振り返ると隊長がキノコを齧るところだった。
咀嚼をしながら部下の方へ歩み寄り、ゴクンと飲み込む。
「お前との旅、楽しかったぜ」
隊長はその場に倒れ込む。
数百年前、蔓延したウイルスにより、人類は不死となった。
すると皮肉にも死を渇望する生命体となったのだ。

翌日、部下の男は本部へ報告する。
残念ながら隊長は死ねず、軽い体調不良のみと。
本部からは、貴重なサンプルを個人的に摂取するなんて『隊長』不良でもあると返事が来た。
本日付けで、隊長となった彼は、元隊長が籠るトイレの方を見る。
この悠久の旅がまだ続くことに安堵感を覚えて。
ファンタジー
公開:23/03/19 18:35
更新:23/03/19 19:07

春島 傑郎

趣味で創作をしています!
漫画、映画、小説などエンタメ全般が好きです。

Twitterでは140字小説などの創作活動を不定期に呟いたりしています。
TwitterID⇒@KeturoHarushima

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