決断列車

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到着したホームには見慣れた姿がありました。
「お久しぶりです」
ポツンと置かれたベンチに座っている彼に挨拶をして、私は隣に腰かけます。
土台だけのビル、ボロボロの看板──見捨てられた都市の名残を見ながら、私たちはしばらくそのまま黙っていました。数十年前まではここが氷海だったなんて、実際にこの目で見ていなければ信じられなかったでしょう。

残り続けるのか、別の道をさがすのか。決めきれなかった私はあの日、ここから決断列車に乗り込んだのです。

「それで、答えは見つかりましたか?」
「というよりは覚悟ができたのです。行く宛のない一人旅は、それはそれは寂しいものでした。それならば、例え未来はなくてもこの星で、あなたと最期まで一緒にいるほうが幸せだなと思ったのです。長い間待たせてしまって、ごめんなさい」
私がそう言うと、彼は当時よりも皺の増えた顔をくしゃくしゃにして笑いました。
「おかえりなさい」
SF
公開:23/03/18 23:48
ジャンル迷子 本当はしろくまの話だった ……え、これ旅?

久寓

(玖寓→久寓に変えました)

読むのが好きです。
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