「意外な展開」メガネ

「ゲームばかりしてないで、たまには外に出なよ」
次郎君は、友人の圭介君によく言う。彼は部屋にこもりがちで、見るからに顔色が悪い。でも圭介君は、人の話に耳を貸そうとはしなかった。

ある時、変わったメガネを彼に貸してあげた。『意外な展開メガネ』という物で、それを掛けると、実際とは逆の風景が見える。次郎君の知人の博士の、試作品だ。

メタバースやゴーグルのゲームが好きな圭介君は、めずらしく関心を示し、それを掛けて外へ出ていった。
すると！魚が空を飛んでいる。池の中を雀が泳いでいる。公園の野菜畑には、ウリのツルにナスビがなっていた。
あり得ない風景を見て、圭介君は思わず楽しくなった。

あちこち歩いてから、彼はメガネを次郎君に返しに行った。
「ありがとう。外に出てみたら、とても気持ちが良かった」
そして笑顔で付け加えた。
「一見、ではなく、百見は一聞に如かず、だね。君の言葉の方が、正しかったよ」