死者の裁判官

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私は死者の裁判官である。
「お前は教師として、何人もの教え子を立派にしたそうだな」
「そうです。何人もの子が幸せな家庭を築き、社会的にも成功していると聞いております」
「だがその陰で何人ものいじめられていた子が、お前が見て見ぬ振りをしていたせいで苦しんでいると聞いている。よって地獄だ」
私は冷たく言い放ち、この者を地獄に落とした。この私の手にかかって地獄に落ちなかった者はいない。いわば地獄の裏帳簿を私は持っているのだ。

人というのは自分の心に描く自分の姿に酔いしれて、本当の自分の姿が見えていない。ここに来る者は自分は悪いことも少しはやったが、それは仕方のないことだ、自分はいいことをこんなにもやってきたんだと得意満面で来る。そういう者の鼻をへし折ることが私の生き甲斐だ。
地獄に落ちたくなければ、裏帳簿に載らないよう清く正しく生きればいいのだ。今のところそういう者は一人もいないが。
その他
公開:22/09/23 01:22

ぴろわんこ

少し変わった、ブラックな話が好きです。

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